園長の改田(かいでん)先生から聞いた話で
一番心に残ったことがあります。
ある園児を受け入れるかどうか?
そのお子さんは、体に障害を持っていて、
泣かしてしまうと呼吸困難の発作が起きて命に関わる危険性があるとのことでした。
さすがの園長先生でもこのときばかりはとても迷ったそうです。
何度も職員会議を開き、園医さんにも相談したのですが、なかなか結論が出ない。
それも当然のことでした。
川上幼稚園には40人以上の幼児がいます。
その子の思い通りになることはまずないでしょう。
そうなるとその子の命に関わることは容易に想像がつきます。
かといって常にお医者さんや看護師さんが常駐しているような整った幼稚園でもありませんし、
担当する先生のストレスもたいへんなものになると予想されました。
万一の際には、園長先生の責任問題にもなりかねないし、
他の園児たちへの影響も決して小さくはないでしょう。
最終的には、担当する先生の一言で方針が決まりました。
「大丈夫、きっと神様が見守ってくださいますよ。」
その一言で園長先生は覚悟を決めたのです。
しかし、その子のお母さんにも当然リスクの説明もしなければなりません。
最新設備が整った幼稚園でない以上、万一ということは十分にあり得るのですから。
お母さんの反発や不安も十分予想できた状況でしたが、
お母さんの返事は私たちの予想を大きく覆すものでした。
「もし万一のことがあったとしても・・・そのときは、
この子が大勢のお友達に見守られながら神様の下に逝けるのですから、
やっぱりこの子は幸せです。
どうかこの子を川上幼稚園に通わせてください。」
結局、そのお子さんを受け入れることに決まり、
その子のお母さんも万一に備えて幼稚園に常駐するようになりました。
しかし、その万一の事態がなかなか起こらない。
(もちろん起こってしまうとたいへんなんですが・・。)
他の園児たちにも事情を話し、泣かさないように、そして発作を起こさせないように
注意して欲しいことをお願いしました。
もっともいくら注意したところで、まだ幼稚園児なんですから、
特に何もしなくても泣きそうになることは何度もありました。
それでも他の園児たちが一生懸命そばについて励ましたり、
何とかこの子の命が縮まらないようにがんばったそうです。
そうしているうちにその子自身にも変化が訪れ、
泣きたくなるような場面でも一生懸命泣くのを我慢するようになりました。
それこそが本当にお母さんが望んでいたことなのかもしれません。
最終的にその子は無事元気に卒園することができ、
現在は小学校にも元気に通っているそうです。
聞いている最中は、
「いい話だなあ。それになんて強いお母さんだろう。」と思っていたのですが、
いざ帰ってきてみて、そのことを書こうとすると涙が止まらないんです・・・。
このお母さんは元からそんなに強かったのでしょうか?
おそらくどこの幼稚園や保育園でも受け入れは断られたのだと思います。
・・かといって事情を知っているお母さんとしては、
泣かすと我が子の命に関わるのだから自宅ではどうしても甘くなる。
そのことを我が子も見越してどんどんわがままになる。
このままでは社会性も身につかないまま大きくなってしまう。
放っておくとやっぱり社会で生きていけないことになる・・。
どんどん追い込まれる中で母としての強さを発揮していったのかもしれません。
これはまさに『奇跡』だと思ったと同時に、誰にでもその強い思いがあれば
「きっと奇跡を起こせるのではないか?」とも思いました。
★今日のテリー語録
「あなたは守られているんですよ。」
私は特定の宗教を信じているわけではありませんが、
20年前に交通事故で心臓が止まった時以来(もちろん今は動いていますが・・)、
何か『大きな存在』に自分が守られているような気がします。
もちろんこれを読んでいるあなたも守られています・・。


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